白 い 路


 山の尾根を走っていた。山は、新緑に香っている。路は、その尾根伝いに延々と続いていた。

 二人と一緒に走っていた。二人は、黙々とハイペースで走っている。その走りに遅れまいと、懸命に走っていた。

 前方に大集団が走っていた。集団は、揃いの上下ウェアを着て、寸分違わぬ歩調で走っている。二人は更にペースを上げ、その集団の中へと吸い込まれるように紛れてしまった。慌てて、後を追う。

 集団と合体した二人は、彼等と一団になって走っていた。押し合い、圧し合い、押競饅頭をするかのように背競り合って走って行く。かなりなハイペースで、ひたすら進んでいた。後に付いて、必死に走り続ける。


 一団が山の尾根路を走っていた。山は、青葉に燃え立っている。路は、山の翠緑(あおさ)に映え、浮き立つように何処までも、何処までも限りなく白く続いていた。

 一団と一緒に二人も、その路を先へ先へと走っていた。彼等と共に二人も、脇目も振らず、前へ前へと進んで行く。

 突如、一団はさっと二手に分かれた。二人も、二方向へとすっと別れる。二つと化した集団は、相当なハイペースで相反する方へと走り続ける。誰一人として振り返る事も、瞬時の逡巡を見せる事も無く、ただただ、前へ前へと突き進んで行く。


 ふと気付くと、独人、山の尾根に立っていた。周りには、人っ子一人見当たらない。緑一色に煙る山の中、唯、白い路だけが、遥か彼方果てし無く、何処までも、何処までも、延々と続いているだけだった。

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